境界なき和声 ー「春の歌」王暁鳴展

芸術の本質は、表現形式を超えて共鳴し合うものです。 王暁鳴は長年、音楽を主要なモチーフとして抽象絵画に取り組んできました。彼女は線や構造、具象的な形によって「音」を描写するのではなく、幾重にも重ねられた色彩の中に、演奏する者と聴く者の感情を溶け込ませ、色彩関係や微細な変化を通して、視覚と聴覚を「人」という主体を媒介に結びつける、境界のない橋を架けています。
境界なき和声 ー「春の歌」
その作品は、音楽を単純に視覚化したものではありません。視覚と聴覚を並置し、対話させ、再構築したうえで、絵画という形式を通して主観的に表現されています。1996年よりクラシック音楽を題材とした抽象絵画に取り組み、2009年、日本のピアニスト・辻井伸行氏による《展覧会の絵》の演奏を聴いたことを契機に、その表現は大きく成熟しました。そして、異なる芸術分野はそれぞれ異なる言語を持ちながらも、その核心にある精神は共通しており、人はメディアの境界を越えて、より主体的な抽象表現へと到達できるのだという確信を深めていきました。
私たちの心を本当に揺さぶるのは、「見える音」「聴こえる色彩」 そのものだけではありません。作品の奥底に流れる、生命、存在、そして価値への深いまなざしこそが、見る者の内面に静かに問いを投げかけます。 ヴォリンガーが『抽象と感情移入』で述べたように、抽象とは、 複雑な世界に向き合う人間の不安と探求から生まれ、永続的な価値を求める営みです。その思想こそが、近年の王暁鳴の制作を貫く精神的基盤となっています。
張 新英
王暁鳴(おう・ぎょうめい)- 1965年 中国湖南省生まれ。広州美術大学油絵科卒業後、1990年に来日。京都市立芸術大学大学院(油絵専攻)卒業。 - 2001年 中国・天津美術大学客員教授、2003年 中国人民大学芸術学部兼任准教授。- 日本美術家連盟会員。東京都在住。
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本展は、音楽を主題とする抽象絵画を通じて、視覚と聴覚の関係性、ならびに東西文明と多元文化が交錯する表現の可能性を探るものです。本展示は、2026年東京多元交響楽団ニューイヤーコンサートの開催にあわせて企画され、音楽と美術が響き合う場を形成。 作家・王暁鳴は、中国の名門大学で美術を学び、中国、日本およびアメリカで35年以上にわたり制作を続けてきました。その越境的経験に裏打ちされた文化理解は、作品に多元的な視座をもたらしています。本展は、中国人画家の創作実践に光を当て、文化の共鳴から生まれる、世界に貢献しうる現代美術の可能性を提示します。
多元文化
2026年2月
オープニング・プログラム・開幕式:2月2日(月)14:30〜15:00
・アートトーク:15:10〜16:00 テーマ:「現代アートと社会のつながり」
【対談登壇者】
- 勅使河原 純(美術評論家)- 加藤 良次(横浜美術大学 学長)- 鈴木 純子(武蔵野美術大学 教授)- 王 暁鳴(アーティスト) ・オープニング・レセプション:16:10〜17:30




